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zoom RSS 武器輸出三原則等「見直し」への疑問 〜本当に「紛争を助長しない」のか

<<   作成日時 : 2010/11/28 17:47   >>

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「防衛計画の大綱」改定と武器輸出三原則の緩和が議論されています。この問題についてどう考えるべきか、私なりのメモを作りました。どうぞご参照下さい。

武器輸出三原則等「見直し」への疑問
本当に「紛争を助長しない」のか

2010.11.28
川崎哲*

 政府・与党内で、「防衛計画の大綱」の改定に関連して、武器輸出三原則等の見直しをめぐる議論が大詰めを迎えている。見直し推進論者は、@現状では国際共同開発の潮流から日本が取り残される、A武器輸出や共同開発によって装備品調達のコストを下げることができる、B武器輸出三原則の「緩和」ではなく1967年当時の原点に立ち返った「明確化」である、といった観点に立ちつつ、(a)国際的な武器輸出管理レジームに基づくこと、(b)完成品の海外移転は平和構築や人道目的に限定すること、などの条件とともに、近日中にも見直しを決定しようとしている。
 しかしこれには重大な疑義がある。まず、平和憲法のもとで世界的にも先進的な「武器輸出禁止原則」を維持してきた日本が、それを後退させようとしているというのが問題の本質である。そのことが世界にどのようなメッセージを発し影響をもたらすかが本来問われなければならない。しかしここでは、道義的な観点からよりもむしろ、「国際的レジームに立脚し、平和構築や人道目的に限定すれば、『国際紛争を助長しない』という1967年当時の原点に反しない」という論理が本当に有効かどうかを検証したい。

 そもそも、国際的な武器輸出管理レジームの現状が、日本の与党関係者の間で十分に理解されているとはいいがたい。報道によれば、政府は、既存の4つの国際的輸出管理レジームすべてに参加している国々を「ホワイト国」として認定し、そのうち旧東欧諸国を除く計19カ国を対象に共同開発を可能にすることを検討しているという[注1]。
 ここでいう4つの国際的レジームとは、

●核兵器に関する「原子力供給国グループ」(NSG)
●化学兵器に関する「オーストラリア・グループ」(AG)
●ミサイルに関する「ミサイル技術管理レジーム」(MTCR)
●通常兵器と汎用品に関する「ワッセナー・アレンジメント」(WA)

をさすと考えられる。このうち、核兵器や化学・生物兵器については、そもそも大量破壊兵器として禁止され、厳しい不拡散措置のもとにある。これらの政策は、大量破壊兵器の不拡散全般の文脈で検証されるべきだろう。
 武器輸出三原則との関連で主に問題となるのは、むしろミサイルおよび通常兵器・汎用品である。MTCRもWAも、少数国による法的拘束力を持たない紳士協定、すなわち申し合わせに過ぎないことから、武器輸出を取り締まる世界的に普遍的な制度というにはほど遠い。専門家の間ではこれらレジームの限界と強化の必要性が長く指摘されているところである[注2]。(2010年4月現在、MTCRの参加国は34カ国、WAは40カ国。)
 WAの場合、参加国においてはリスト品目の対外移転に関する自国法制に基づく管理を実施することとし、また、通常兵器・汎用品の移転の透明性を高めるために参加国内の通報を行うという申し合わせをしている。しかし、それらの実施は参加各国の裁量に委ねられているほか、意思決定がコンセンサス方式のためすべての国が拒否権を持っているのに等しいといった構造的欠陥がある。通報制度も事後通報であることから、懸念国や紛争地域に武器が移転しないよう担保する制度にはなっていない[注3]。

 近年のグローバリゼーションのなかで、一方では、人と物資の国境をこえた移動が急速に拡大している。他方では、国家対国家の戦争よりも、国内や地域における非国家主体を巻き込んだ紛争、暴力、テロが頻発するという「紛争の変質」が進行している。
 こうした中で、輸出管理あるいは安全保障貿易管理の制度強化がさけばれてきた。国際市場や技術移転の態様の変化によって、汎用性をもつ物資や技術を非国家主体や個人が入手することも容易になっている。規制品目リストを作って輸出に障壁を置くという従来型の管理制度をこえて、潜在的危険性をもつ流通には包括的な規制の網をかけ、最終用途、最終使用者を効果的に規制する仕組みが必要であるという議論が主流化している[注4]。そのような地球規模の包括的貿易管理制度を確立することが、今日の諸国家の責任というべきである。しかし現状は、その入り口にようやくたどり着くかどうかといった段階である。

 現在国連では、通常兵器の輸出入に関する国際基準を確立し管理強化をはかる「武器貿易条約(ATT)」に向けた作業が進められている。ATT構想は、通常兵器が世界中で使用され日々無数の犠牲者を生み出しているという現実の非人道性から出発して、NGOが提唱してきたものである。2006年に英国が中心となり国連決議を可決されたことにより気運が高まり、現在、2012年の国連会議に向けた準備が進められている。
 NGOは、国際人権・人道法の観点をATTの基本に据えることを求めている[注5]。紛争現場において通常兵器が使用されている実態に着目し、それを防ぐ管理制度を作る必要がある。この視点は、日本政府が提唱してきた「人間の安全保障」とも通じるだろう。

 総合するならば、武器輸出に関する現行の国際的レジームはきわめて脆弱なものであり、武力紛争の態様が複雑化する今日、一層の強化が求められている。「紛争を助長しない」ことを基本理念として出発した日本の武器輸出三原則等を、現行レジームへの参加を論拠として緩和することは本末転倒であり、むしろ、国際制度の強化のためにいかに貢献するかという議論がなされる必要がある。以下、基本的な論点を提起したい。

1.現行の脆弱な国際的輸出管理レジームを強化し、武器貿易条約(ATT)をはじめとするより強固で包括的な制度をつくることが求められている。「紛争を助長しない」原則、「人間の安全保障」、国際人権・人道法の観点を強化すべきである。

2.「完成品の移転は平和構築、人道目的に限る」との条件が議論されているが、それをどのように担保し検証するのか。移転した兵器等の最終用途、最終使用者の確認、追跡、検証を行う国際制度を作らない限り、悪用の可能性を排除できない。

3.防衛装備品の調達コストを下げることが三原則等見直しの本旨であるという議論があるが、だとすれば、この見直しと並行して防衛費とりわけ調達のための歳出を抑制し削減するための目標数値が設定されなければ説得力はない。

4.日本自身の管理政策と国際的管理制度が総合して、世界的な武器流通の削減につながるというマクロなビジョンが必要である。それを欠いた政府・与党の議論は、紛争による犠牲防止よりも一部企業の利益を優先しているとの批判を免れえない。

注釈
*かわさき・あきら。ピースボート共同代表 kawasaki[a]peaceboat.gr.jp 03-3363-7561
[注1] 「武器輸出三原則 19カ国を対象に緩和を検討 年末に公表で調整」2010.11.13 MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101113/plc1011130100001-n1.htm
[注2] 参考文献として、浅田正彦編『兵器の拡散防止と輸出管理 制度と実践』有信堂、2004.
[注3] 山本武彦「通常兵器関連の輸出管理レジーム」、上記浅田編書
[注4] 大量破壊兵器委員会『大量破壊兵器 廃絶のための60の提言』岩波書店、pp.141-145 参照
[注5] コントロール・アームズ・キャンペーン参照 www.controlarms.org

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
本音は「軍事ビジネスのバスに乗り遅れるな!」だからその辺はぶっちゃけどうでもいいのです
日本は不景気です
産業界は売れるものを売りたい
つまりそういう事です
ando
2010/12/04 20:39
軍拡に加担するような法律に賛成はできません。
ビジネスのために「喰えるところ」はどこまでも喰う、ということなのでしょうか?



kayikayi
2010/12/13 00:29

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