『外交フォーラム』8月号、「日本と核抑止力」をめぐるホットな論争

 このところ、忙しい日が続いて、更新できませんでした。外務省系の雑誌である『外交フォーラム』8月号が、「特集・日本の軍縮イニシアティブ--核兵器のない世界へ」という特集を組んでいます。私自身も座談会への参加という形で登場させてもらいました。日本の主要な識者が、政府関係者からNGO関係者までずらりと並んだ読み応えのある特集になっているので、ぜひお読みください。といっても、この雑誌は本屋に行っても見あたらないというのが難点です(紀伊国屋とか丸善くらいの大きな本屋に行かないとないようです)が、図書館で探したりネットで注文してください。

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 そのなかでも、核の傘(拡大抑止)、核の先制不使用、安全保障における核兵器の役割の縮小、といった点について、興味深い論説がたくさん出ています。この「核軍縮と安全保障」の問題は、今後の世界の核軍縮を展望する上で、そして日本の安保政策の方向性を考える上で、非常に重要かつ緊急に議論が必要な問題です。そのような議論の一助として、この『外交フォーラム』のなかの関連記事のポイントをご紹介します。


■座談会 軍縮と安全保障のはざまで
/黒澤満/吉田文彦/川崎哲/佐野利男

では、佐野利男・外務省軍縮不拡散科学部長が「核の先制不使用には厳密な議論が必要だ。核保有国間で先制不使用の約束をするとして、非核兵器国はどうなるのか。まずやるべきは非核兵器国に対する消極的安全保証の再確認だ」と述べているのに対して、川崎が「消極的安全保証を法的拘束力のあるものにすることは重要。先制不使用については条約化の必要はなく、個別政治宣言でよい。日本はそのような米国の宣言に反対すべきでない」と述べたところ、佐野部長は、そのような先制不使用の実効性に対して疑問を投げかけ、「何ら検証のしようのない先制不使用に依拠して国の安全保障を十分を期すことは困難」と主張。
 これを受け吉田氏が「ということはこの問題を日米で協議するときに日本は先制不使用宣言をするなと言うのか」と質問したところ、佐野部長は、先制不使用が具体的にいま日米でイシューになっているわけではないとしながら、日本としては「現状の拡大抑止を確認する。それを弱める先制不使用は、日本の求めるところではない」と答えています。


実際に米国が先制不使用宣言をするかどうかという問題については:

■「持てる国」と「持てない国」の協調は取り戻せるか――NPTを機能させるために
/秋山信将

において秋山氏(一橋大学准教授。元日本国際問題研究所主任研究員)は、5月に出た議会委員会の報告書を見る限り、「先制不使用や核抑止の役割を対核攻撃に限定するといったような政策変更の可能性は高くない」と分析しながらも、4月のプラハ演説が「核兵器の役割を限定する方向性」を打ち出していることから、核態勢見直し(NPR)の進展を注目すべきであると指摘しています。

■オバマ政権の意欲
/ジョージ・パーコビッチ

においてパーコビッチ氏(カーネギー国際平和財団核不拡散担当副所長。米国核政策に関する外交問題評議会タスクフォース委員))は、核態勢見直しにおける今後の「主要な課題は、同盟国に対する戦略攻撃を抑止する十分な攻撃力を維持するという点ではなく、いかに過剰分を管理するかになるだろう」と指摘し、日本など同盟国に対して「信頼のおける抑止力を提供する核以外の能力を開発すること」(下線は引用者)に今後オバマ政権は力を傾注していくであろうと指摘しています。


■ベリー元米国米国防長官特別インタビュー
「核兵器のない世界」への道
/聞き手 春原剛

のなかでペリー元国防長官は、「どのような措置をとれば同盟国が安心できるのかを米国は緊密に協議しなければならない。たとえば(原子力潜水艦に配備した、核弾頭搭載の)巡航ミサイルを退役させることは可能だが、それで日本は納得するのかといった問題がある」と述べ、日本が核巡航ミサイルの退役に難色を示していることを暗に示唆しました。続けて、NATOとおこなっているような「ニュークリア・シェアリングを日米同盟に導入することも可能だ」と述べています。


 パーコビッチ氏は論説を「(核兵器のない世界に向けた)最大の問題はホワイトハウスにあるのではなく、成功のためにその協力が必要な、他の国の政府にあるのだ」と結んでおり、また、ペリー氏は「世界的な核廃絶には核保有国だけでなく、非核保有国の協力も必要だ」と述べています。
 外務省と関係の深い本誌への寄稿のなかで彼らがこう述べていることは、日本に対するメッセージとして受け止める必要があると思います。


先制不使用をめぐる日本の立場に関しては:

■核軍縮時代の日本の安全保証――拡大抑止の信頼性向上が鍵
/佐藤行雄

のなかで佐藤氏(前日本国際問題研究所理事長。元外務省北米局長、元国連大使)は、先制不使用は、米ロ核軍縮、CTBT、FMCT、核テロ防止といった「重要課題に比較して優先度が低い上に、その進め方によっては核抑止の効果を減ずることにもなりかね」ないとして、「少なくとも・・・北朝鮮を前にして国際社会がとるべき策ではない」と主張。生物・化学兵器は核抑止の対象としないという考え方については、北朝鮮が生物・化学兵器を保有していると言われながら解決策が見いだせていない状況の中で「これらの大量破壊兵器を核兵器による抑止の対象から明示的にはずすことは、北朝鮮に対する誤ったメッセージを送ることになりかねない」、「核戦力の抑止効果を最大限にするためにその使用目的に曖昧さを残しておくことは抑止戦力の重要な要素」と述べています。


■「核の傘」再考の時代へ
/黒崎輝

のなかで黒崎氏(立教大学講師)は、2000年の民主党の核政策が北東アジア非核兵器地帯や先制不使用に触れていることをあげて「『核の傘』論議を深めるための政治的条件が整いつつある」と述べています。


一連の問題に対して、公的な議論をいま高める必要があると思います。川崎哲

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