このまま放射能漏れが続いた場合、事態はどこまで発展するのか

 福島原発をめぐる状況は長期化の様相をみせてきました。こうしたなか、政府や東電、また新聞・テレビの多くの識者は現時点のレベルの放射能は「健康には影響ない」を連発しています。大気中の放射線量も減少傾向にあるということが報じられています。(モニタリングデータは首相官邸のホームページ「東日本大震災への対応」http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.htmlでみることができます。)
 一方で、今日米屋に行ったところ、いつも我が家で買っている福島のコシヒカリが置いていません。米屋さんによれば「福島のお米は問屋さんから卸されなくなった」というのです。今出ているお米は明らかに去年収穫したものだから問題はないはずなのに。まったく非論理的でありますが、これが市場の反応、すなわち人々の心理というものなのでしょう。一方で「大丈夫だ」をくり返す政府とマスコミ、他方で福島の去年の米さえ拒否する市民。現在の日本の状況をよく示すコントラストだと思います。
 冷静になって考えてみましょう。1~3号機の原子炉では、圧力容器の損傷が強く疑われ、核燃料と接した高濃度の放射性物質を含んだ水が垂れ流されています。それは海にまで垂れ流されていることが確認されました。水が海に流れ出るのをブロックする作業が行われたけれども、うまくいっていないようです。原子炉を冷却する注水が続けられていますが、注げば注ぐほど放射能を含んだ水が漏れ出てきていると考えられます。さらに、4号機も含め、使用済み核燃料プールの状況も不明です。
 このような状況が続けば、事態はどこまで発展するのでしょうか。とりわけ今や、原子炉を冷却するには短くても数カ月先、長ければ数年かかるということが公然と言われています。先を見通した議論がいま、必要だと思います。

 第一に、放射線の人体への影響は、累積の放射線量が問題となるということを改めて思い出す必要があります。すでに、浪江町および飯舘村で3月23日以降の累積放射線量が、国が定めた人工被曝年間限度の1ミリシーベルトを超えたと報道されています(http://mainichi.jp/select/today/news/20110403k0000m040088000c.html)。つまり、毎日の毎時の放射線量はかりに微量であったとしても、あるいは仮に減少傾向にあったとしても、累積の放射線量は少しずつ上がっていくわけです。すると、今の時点で30~40キロの浪江町や飯舘村が年間限度に達したならば、次はさらに遠いところで同じ状態になるのではないか。徐々に影響範囲が広がっていくというふうに考えるのが自然です。
 今の状態が数カ月あるいは数年続いた場合に、どのような影響がどのような範囲で予想されるのか。識者にはそろそろ、そのような分析をしていただきたいものです。

 第二に、海水および地下水および土壌への影響です。連日、きわめて高濃度の汚染水が報告されています。現在大気中で観測されている放射線の多くは、おそらく、地震直後に意図的に行われたベント(圧力容器からの空気抜き)による影響だと考えられます。これに対して、最近明らかになった高濃度の汚染水の垂れ流しは、東電側も予想していなかった「圧力容器の破損」が疑われる状況のなかで起きています。これが海水、地下水、土壌に対してどのような影響を持つのか。これについて、まだ多くのデータは発表されていません。
 海水では薄まるから大丈夫だとか、魚には蓄積されないとかいうコメントが報道されていますが、安易にそのように決めつけるべきではないと思います。とりわけ、大気中の放射線に関しては上記の通り毎日データが公表されているのに対して、海水や土壌への影響については、観測とその結果の公表態勢はきわめて脆弱といわざるを得ません。海水の観測というのは大気中よりは技術的にも大変だと思いますが、それでも今のようにポツンポツンと観測してときたま公表するというのではなくて、もっと抜本的に体系的に取り組まれる必要があると思います。魚など海洋生物(そして海産物)の調査も然りです。

 第三に、原子炉で新たな水素爆発が起きる可能性はないのかという問題です。「新たな水素爆発を防止するために東電が原子炉に窒素を充填する検討に入った」という報道が昨日なされています(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110402-OYT1T00333.htm?from=navr)。しかしながら、今頃「検討に入った」でよいものでしょうか。もし、すでに圧力容器に損傷があることがほぼ確実になっているような状態のなかで水素爆発が起きたらどのようなことになるのでしょうか。原子炉で水素爆発が起きる可能性については、専門家が都内のシンポジウムで指摘していると報道されています(http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011040201000909.html)。そのシンポジウムでは、そのような水素爆発が起きた場合、「圧力容器に穴が開く程度」で「飛散するのは燃料ではなく、燃料と触れた水と考えられる」のであって、「チェルノブイリ原発事故のような大規模な汚染拡大はない」と述べられたとのことです。しかし、その評価は正しいのか。いずれにせよ、今の状況で水素爆発が起きれば圧力容器の損傷は決定的なものとなり、これまでとは異なる次元の放射性物質の飛散が想定されると考えるべきでしょう。
 だとすれば、「仮に水素爆発が起きたら」という想定のもとに、対策が立てられなければなりません。いたずらに不安を煽ってはいけないとしても、そのような場合にどの程度の範囲の人たちがどのような避難行動をすべきなのかについて、情報公開とデータに基づく議論が今からなされる必要があります。
 津波に対しては「起きそうになったら避難する」ということが原則で、多くの人たちはそのことを理解しています。今の状況のなかで水素爆発が起きる可能性があるのだとしたら、そのような場合はどうすればよいのかということを今から議論する必要があるでしょう。そうでないと、実際にそのような爆発が起きたときにパニックが起きると思います。

 第四に、原子炉のなかで何が起きているかという問題です。日本では大方の識者の見解および報道は、原子炉の核燃料が核分裂を起こしていることはないだろうということが前提となっています。しかし、3月31日にアメリカのモンテレー国際大学院不拡散研究センター(CNS)のダルノキーベレス研究員がアジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカスに「『意図しない再臨界』が起こっているのか」という論文を発表しました。核燃料が持続的な核分裂(臨界)を起こしたという可能性を否定すべきでないという内容です。同じくアメリカの環境エネルギー研究所(IEER)のアージュン・マキジャニ所長がこの論文の解説文を寄せています。その日本語版が、バンクーバーのピース・フィロソフィー・センターの乗松聡子さんによって作られています(http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/is-unintended-recricality-ocurring.html)。(★全文の和訳はこちら→http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/full-japanese-translation-of-dalnoki.html
 私にはこの論文の内容について科学的見地から論じる能力はありません。しかし、CNSもIEERも国際的に著名な、核不拡散や原子力の分野では大きな影響力のある団体であります。これらの団体がこうした見解を出しているということは、日本の研究者や報道機関も注目すべきです。そして、本当にそのような可能性があるのか、もしそのような可能性があるのだとしたら、それは今後の放射能漏れの展開にどのような影響をもたらすのか、という議論をすべきでしょう。

 4月2日の朝日新聞の夕刊には、「日本気象学会(理事長・新野宏東大教授)が会員の研究者らに、大気中に拡散する放射性物質の影響を予測した研究成果の公表を自粛するよう求める通知を出していた」という記事が出ていました。開いた口がふさがりません。何のための研究者であり、専門家でしょうか。やるべきことは、まったく逆です。今こそ研究者や専門家は、上に掲げたような諸点について、専門的見地から知識やデータを公開し、知見や分析を人々に分かりやすい形で披露すべきです。

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