北朝鮮の核実験への対応-非核の枠組みを急げ

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 2013年2月12日、北朝鮮が3回目の核実験を行った。許されない暴挙である。核兵器開発の段階をさらに一歩進めるものであり、東北アジア地域のすべての国々と人々に対する深刻な脅威である。
 広島・長崎の惨禍を知る私たちは、無差別・非人道兵器である核兵器をまるでゲームのようにもてあそぶ北朝鮮指導者を厳しく批判しなければならない。核兵器開発は、原爆で犠牲になりまた今日被爆者として生きる数多くの朝鮮半島の人々に対する冒涜でもある。北朝鮮の人々は貧困と飢餓に苦しんでおり、核軍備競争は彼らから生存のための資源を奪うものでもある。

地域的な非核化交渉を
 核実験の強行という暴挙に対しては、国際社会による厳しい制裁は避けられまい。しかし、制裁や圧力の強化がさらなる強硬な反応を生むだけであることは、歴史が示している。もっとも重要なことは、非核化のための地域的な対話と交渉を進めることである。
 その際、2006年、2009年に続く今回の3回目の核実験によって、北朝鮮がもはや簡単に核兵器を放棄する段階にはなくなったという現実を踏まえなければならない【注】。先のミサイル実験に引き続く今回の核実験は、新しい金正恩体制の下での国内向けメッセージとの意味合いが強いともいわれる。かつて2000年代前半の金正日外交は核兵器開発を対米交渉カードとする「瀬戸際外交」と言われたが、今日の北朝鮮指導部はむしろ「核保有国」としての地位を名実共に確立することをめざしているように見られる。
 それゆえ北朝鮮との交渉は、まずはこれ以上の核実験を行わせず、核開発を凍結させることを目標にするほかあるまい。その上で、安全の保証、国交正常化、経済協力を組み合わせた、地域的な非核・平和体制構築の交渉を進めていくべきである。東北アジア非核兵器地帯は、その重要な柱の一つとなる。1992年の南北非核化共同宣言や2005年の六者協議共同声明は、すでにひどく蹂躙されているが、それでも今後の地域の非核・平和体制の土台となるものである。すでに北朝鮮が事実上の核保有国になってしまった現実を踏まえつつ、これらの目標に導いていく複雑な道筋を忍耐強く歩むほかない。
 周辺諸国は、挑発に乗るような形で軍事的に反応すべきではない。日本国内では敵基地攻撃能力を検討するといった議論が出ているが、このような動きは北朝鮮をさらに強硬な態度に追いやり、地域の状況を悪化させることはあっても、問題の解決には決して役立たない。
 北朝鮮の核能力の段階が高まっている中で、不測の暴発や事故を防ぐことも重要である。核に関わる不測事態が起きた場合、その影響は日本を含む周辺諸国全体にわたる。その観点からも、制裁一辺倒に陥るのはむしろ危険であり、慎重な対話と関与が重要である。

核兵器の非合法化を
 北朝鮮による核実験はまた、核兵器の世界的な非合法化が急がれることを浮き彫りにした。北朝鮮は2003年、米国がイラクに戦争を仕掛けようとするさなかに、米国の「敵視圧殺政策」を糾弾しつつ核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言した。それから10年間で、徐々に核兵器開発のレベルを上げながら、今日に至っている。
 北朝鮮に対しては、もちろん、核兵器の放棄とNPTに非核保有国として復帰することを求めていかなければならない。しかし、米国をはじめとする五大国の核兵器は許容するがその他の加盟国の核は許さないというNPT体制の中に、北朝鮮が容易に戻るとは考えにくい。中東にイスラエルが、南アジアにインド・パキスタンが存在するように、東北アジアでは北朝鮮がNPT枠外の核保有国としての地位を固めてしまった。今後さらに、NPTを離脱する国々が現れないとも限らない。このままでは、核拡散の波は止められない。
 だからこそ「いかなる者の手にあれ核兵器は許されない」という世界的な規範を早急に確立しなければならない。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)をはじめとする世界の市民社会組織は、数多くの国々の政府とともに、核兵器を包括的に非合法化する「核兵器禁止条約」の交渉開始を求めている。そのような条約へのプロセスを一刻も早く開始させ、NPTの中だろうが外だろうが、いかなる国であれ核兵器による武装は地球社会に対する受け入れがたい挑戦であるということを明確に規範化しなければならない。
 その中で日本が果たすべき役割は、自らが米国の核兵器に依存している政策を改め、核兵器禁止条約の交渉を率先して進めていくことである。

2013.2.24 川崎哲

【注】
米国の専門家の間では、北朝鮮の非核化よりも、北朝鮮が核を放棄しないであろう現実を踏まえて、北朝鮮からの核不拡散に力点を移すべきだという主張も出ている。
James Acton, “Focus on Nonproliferation – Not Disarmament – in North Korea,” Carnegie Endowment for International Peace http://carnegieendowment.org/2013/02/14/focus-on-nonproliferation-not-disarmament-in-north-korea/fgl5

【参考声明など】
International Campaign to Abolish Nuclear Weapons (ICAN), “North Korean nuclear test raises concerns on humanitarian impact of nuclear weapons,” February 12, 2013
http://www.pressenza.com/2013/02/north-korean-nuclear-test-raises-concerns-on-humanitarian-impact-of-nuclear-weapons/

People's Solidarity for Participatory Democracy (PSPD), “PSPD Condemns North Korea’s Nuclear Test that threatens Peace on the Korean Peninsula” February 12, 2013
http://www.peoplepower21.org/English/994997

U.S. Working Group for Peace & Demilitarization in Asia & the Pacific, "Statement in Response to Third DPRK Nuclear Explosive Test" February 12, 2013
http://www.asiapacificinitiative.org/statement-in-response-to-third-dprk-nuclear-explosive-test/

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