オバマ「核削減」演説を歓迎する。だがペースは遅すぎる。保有国任せでは核兵器は無くせない

 オバマ米大統領は昨日(6月19日)ベルリンで演説し、戦略核兵器の配備数を約1000~1100発にまで削減することをロシアに提案すると表明しました。これは、2010年の新START(米ロ戦略兵器削減条約)が定める2018年までに1550発へと減らすという目標から、さらに最大3分の1の削減をめざすというものです。オバマ大統領は同時に、米ロによる戦術核兵器の削減ために欧州のNATO(北大西洋条約機構)諸国と協力して取り組むとも述べました。
 米国は現在、戦略核兵器を約2000発配備しており、戦術核兵器やその他の予備を含めて計約7700発の核兵器を保有しています。対するロシアは、戦略核兵器を約1800発配備し、戦術核やその他の予備を含めて計約8500発を保有しています。1万7000発を超える世界の核弾頭総数のうち、9割以上が米ロのものです。

 米ロが核削減をすすめることは、もちろん歓迎すべきことです。しかしそのペースは、あまりにも遅いと言わざるをえません。世界の核兵器の大多数を保有する米ロ両国が、相互の均衡を保ちながら、今から5年以上先にようやく配備数を各1000にするとかしないとか言っているようなペースでは、到底「核兵器ゼロの世界」は見通せません。

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、オバマ大統領の声明を受けて記者リリース「核兵器削減でリスクを減らせるだろう。だが禁止条約こそが喫緊の課題だ」を発表しました。(英語原文はこちらをご覧下さい。)
 このほか、国内外のNGO・市民による反応(声明等)は核兵器廃絶日本NGO連絡会のウェブサイトにまとまっています

 米ロが核削減を行っている背景には、米ロの政府にとっても軍にとっても、冷戦時代の遺物である核兵器がもはや使い道のないお荷物になりつつあるという現実があります。今日、戦争において核兵器を使うというシナリオは、軍事上も政治上も、想定することがますます困難になりつつあります。核兵器を維持し続けることは、経済的な負担でもあります。核兵器の保持は、反対に、核拡散や核物質・核技術の流出による新たな脅威を引き起こしつつあります。こうした現実を踏まえながら、オバマ大統領は核兵器の削減をすすめています。
 これに対して、私たちはきっぱりと言わなければなりません。核兵器は、いかなる意味においても使えない兵器であるし、使ってはならない兵器であるということを。

 近年、国際赤十字や、スイス、ノルウェー、南アフリカ、メキシコといった国々の政府が「核兵器の非人道性」に焦点を当てる動きを見せています。昨年から始まった国連における「核兵器の非人道性」に関する共同声明への支持は広がり、今や80カ国が賛同しています。今年3月にはオスロで核兵器の人道上の影響に関する国際会議が開かれ、127カ国が参加しました。この第2回会議が、来年2月にメキシコで開催されます。
 世界はいま、核兵器がひとたび使われればそれは壊滅的な人道上の被害を地球規模でもたらすということについての理解と憂慮を深めつつあります。

 このような核兵器は、国際法で禁止されなければなりません。核兵器には、いかなる正当性も与えられてはならないのです。
 いま「核兵器の非人道性」に関して声を上げ始めている国々が中心となって、核兵器禁止条約の交渉を開始することが重要です。
 米ロをはじめとする核保有国が核兵器をなくしてくれる日を待っているという姿勢では、核兵器はなくなりません。非核国が先導する形で、核兵器の正当性をきっぱりと否定し、核兵器を非合法化する国際条約を作らなければなりません。それに対して核保有国はすぐには賛同しないでしょう。しかし、非核国がそのような動きが起こすことで、米ロなどの核保有国の動きはさらに後押しされ、加速されるはずです。

 米国の核削減が「核兵器ゼロ」へとつながっていくためには、以下のような諸点が不可欠です。

1.一刻も早く1000発以下をめざす
 米ロ以外の核保有国(英仏中など)にしてみれば、米ロが桁外れに大量の核兵器を独占し続ける状態の中で、真剣に自らが軍縮しようとは考えないでしょう。まずは一国も早く米ロが1000発を切り、他の保有国(100~300発程度)と少なくとも「ケタが同じ」水準になってこなければ、すべての核保有国を巻き込む多国間の核軍縮交渉の展望はのぞめません。

2.欧州の戦術核兵器を撤去する
 米国が欧州に配備している戦術核兵器は、冷戦時代の遺物であって、もはや実戦上の意味を持ちません。これを完全にゼロにして、米国はもはや戦術核兵器を必要としていないということを宣言すべきです。米国がこのように動けば、それは日本にとっても重要な意味を持ちます。日本にはいまだに、冷戦時代の欧州さながらに「有事には米国の核配備が必要だ」などと主張する人たちが少数ながらいます。このような主張に対して、倫理的に誤っていることはもちろん、軍事的な視点からももはや時代遅れであるということをはっきりと示さなければなりません。

3.核兵器の役割を極小化させる
 核兵器の削減をすすめるためには、どのような目的で核兵器を使用するのかという「政策」を変更する必要があります。米国は他の核保有国同様、核の先制使用をも辞さない政策を維持しています。しかし、米国が率先してこの立場を変えて「核の使用は、核による攻撃を受けた場合のみ」に限定し、それ以外の核使用を否定する政策をとるべきです。すべての核保有国がそのような立場を信頼に足る形でとるようになれば、核の脅威にさらされるのは核保有国のみになり、非核国は核の脅威から解放されることになります。このような政策変更は、さらなる核削減を可能とする土台にもなります。

4.数を減らしたぶん質的に強化する、という近代化政策を止める
 米国では、国内の核兵器ロビー、関連技術者や産業界の顔色をうかがって、数を削減したぶん質的に強化するための核兵器「近代化」政策が進められています。そのための高度な研究や実験が行われています。そのような目的で、核兵器の数は減らすが予算は増やすという皮肉な現象が起きています。このような核の「近代化」政策を止め、寿命になった核兵器はそのまま退役させ、核兵器がすみやかに自然死していくことを促すべきです。

5.核兵器の非人道性に関する国際会議に参加する
 米国が核軍縮に真剣だと主張するのであれば、世界的に関心が高まっている「核兵器の非人道性」の議論に参加し、核保有国としての認識と責任について語るべきです。前回のオスロ会議には、核保有5大国が結託してボイコットしました。次回のメキシコ会議には、このような取り決めを止め、米国は率先して参加すべきです。

 これらの1~5のいずれについても、日本の役割は非常に大きいといえます。日本は米国の同盟国として「核の傘」に頼る政策をとってきましたが、その立場にあるからこそ、これらの行動を米国に積極的に働きかけることができるはずです。現実にはしかし、これらの諸点について日本は及び腰であるし、足を引っ張っていることさえあります。

 日本は本来、世界を主導する形で核兵器禁止条約の交渉開始を求めるべきです。しかし政府はそのような取り組みには反対しており、核軍縮は米国と協調的なやり方ですすめるべきだと主張しています。政府がそう主張するならば、少なくとも、上記1~5について積極的な外交努力を米国に対して行い、具体的な結果を示さなければなりません。

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2013.6.20 川崎哲

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