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zoom RSS 北朝鮮の「ミサイル発射」−電車を止める前に考えるべきこと

<<   作成日時 : 2017/05/19 09:29   >>

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 北朝鮮のミサイル発射で日本国内の電車を止めるとか止めないとか言っているが、まず基本的なことを押さえたい。いま北朝鮮が行っていることは、ミサイルの実戦攻撃ではなくて、核を搭載したミサイルを発射する能力があることを誇示する実験(あるいは演習)だということだ。
 もちろんミサイルそのものがどこかに着弾したら(陸地であれ船舶であれ)被害が出るわけで、それは避けなければならない。だが弾頭を載せていないミサイル本体が着弾しても、それでもたらされる被害は隕石が落ちてくるのと同等程度のもの。それで都市や国家が壊滅するというようなものではない。

 今の国際社会ではロケットやミサイル全般を禁止する規定はない。そういった飛翔体の実験を行う場合には国際的に事前の通告と情報開示をすることが求められている。落下地点で思わぬ被害などが出ないようにするためのものだ。
 だから一般にはロケットやミサイルの実験をすることそのものは禁止されていない。だが北朝鮮の場合は別だ。核不拡散条約(NPT)を脱退し核実験をしたため、核・ミサイル実験をしてはならないという厳しい安保理決議が採択されてきたからだ。だから、他の多くの国では問題ないが北朝鮮はダメということになっている。

 北朝鮮のミサイル開発が日本にとって問題となるのは、それが核を搭載する能力をもつ可能性があるからだ。韓国にとっては、短距離の撃ち合いが怖い。米国は、本土に届く長距離ミサイルが開発されては困ると考えている。日本の場合は中距離ミサイルが問題となる。
 とすれば日本にとっては、北朝鮮の中距離ミサイル能力を止めること、および、核兵器の開発を止めることが必要となる。仮に核の開発を止められなくても、中距離ミサイルの開発を止めることができれば、とりあえず核を日本まで「運んで」こられなくなるので、日本への核の脅威は一定程度押さえられる。
 
 北朝鮮のミサイル能力を止めるために、二つの方策が論じられている。一つはミサイル防衛(ミサイルをミサイルで迎撃する)の強化、もう一つは敵基地攻撃力の保持(ミサイルが発射されそうになったときに先制的に叩く)だ。だがミサイル防衛の精度はきわめて不十分で、百発百中というにはほど遠い。
 ミサイル防衛の強化システムの導入が図られている。韓国はTHHADを導入した。日本も近く同様のことを決定しそうだ。だが高い高度で撃ち落とすというこれらのシステムは、基本的に米本土に届くミサイルを迎撃することを想定している。米本土防衛システムに日韓が協力する形だ。巨額を投じて。
 安保法制の下でも、集団的自衛権の行使は日本の「存立危機」事態にしか許されない。日本を飛び越えて米本土に飛んでいく弾道ミサイルを迎撃することが、この要件に適合するとは思えない。だから政府はあくまで「我が国の防衛」目的だと主張するだろう。だが実態は「長距離ミサイル」対策に向いている。

 ミサイル防衛がザルなので、敵のミサイル基地を先制的に攻撃してしまえという主張が勢いを持つ。先制攻撃は専守防衛の逸脱だ。だが推進派は先制的な防衛だと主張するだろう。たしかに今日、侵攻軍がゆっくり来るのではなく瞬時に核ミサイルが飛んでくる時代だ。防衛に後先があるのか難しいところだ。
 しかし防衛のためには敵基地を先制的に攻撃することも許されるというのなら、憲法9条の2項はおろか1項(国際紛争を武力で解決しない)も変えなければ理屈に合わないだろう。さらに、先制攻撃をしたら、どのような結果が伴うか。全面戦争を誘発することは疑いの余地がない。日本にその気があるのか。

 ミサイル防衛はザルで、米本土防衛のために巨額を投じるのはバカげており、敵基地攻撃は危険だ。…となれば、北朝鮮の中距離ミサイルを止めるような政治的・法的合意をめざすことの方がより現実的だ。2002年の日朝平壌宣言、2005年の六者協議共同声明にその萌芽があった。そこに戻るべきだ。

 日本としては、北朝鮮が中距離弾道ミサイルの凍結(そして解体)を進めるような政治的・法的合意をめざした外交交渉をめざすべきだ。よく「日米韓の連携」といわれるが、長距離ミサイルが止められればよいという米国と、今すでに射程圏内に入っている日韓とでは利害が異なることを十分に認識すべきだ。
 さらに仮に核ミサイルを撃たなかったとしても、通常弾頭のミサイルや航空機による通常攻撃だけでも、日本や韓国の原発を叩けば「放射性物質テロ攻撃」の効果をもたらすことができる。原発や核燃料関連施設のセキュリティ強化は焦眉の課題である。電車を止めている場合ではない。
 ミサイル防衛については、韓国のTHHAD配備がそうだったように、日本が高度・長距離対応型の新システムを導入したら、中国やロシアが自分たち向けだと強烈に反発し、北東アジアの軍拡競争を悪化させるだろう。米本土防衛システムに巨額を投じ地域の緊張をあおることが日本の利益だとは思えない。

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北朝鮮のミサイル発射で電車を止める感覚は日本人の無知認識不足を露呈し、韓国はじめ諸外国から嘲笑されますね。それは安倍政権やマスコミの危険のあおりによるものと思います。安倍政権は北朝鮮の危機を口実にイージス艦、サードシステムの導入など防衛予算の増額に弾みをかけたいということです。日米の防衛産業が喜ぶだけですね。いわば北朝鮮ありがとうと言いたいところでしょうか
たけちゃん
2017/05/19 11:23

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